しのびよる水道水の汚染
私たちが生活の糧としている「水」。私たちの日々の暮らしにはもちろん、農業や工場、発電に至るまで、その水環境は相変わらず悪化の一途を辿っています。
水質汚染は、生活排水や工業排水、農薬など様々ですが、なかでも生活排水は、その量だけでも工業排水の数十倍といわれており、効果的に防止するためには、私たちの水の使い方を再度見直す必要があります。
水質汚染はどうして起こるの?
風呂垢の混じった排水やトイレの排水、洗濯の際の合成洗剤、料理に使った油の直接排水、シャンプー・リンス・ボディソープによる排水・・・
河川や湖沼には、私たちの生活を便利にする様々な物質が流れ込みます。
それらに含まれる窒素やリンなどが大量に河川や湖沼に流入すると、水中の栄養塩の濃度が高くなる「富栄養化」という現象が起こり、植物プランクトンなどが異常に繁殖し、それらが腐敗することによって大量の有機物となります。
有機物は私たちの家庭に水道水として届く前に洗浄されますが、その際に殺菌剤である塩素と化合し、私たちの体に危機を及ぼす発ガン物質の「トリハロメタン」が育成されます。
ちなみに私たちが河川などに流している生活排水は、1人1日当り約250ℓといわれており、それらがその水源に頼る全ての家庭で同時に流されているわけですから、原水の汚れはひどくなる一方です。
汚れがひどくなればなるほど塩素を多く投入する必要があるため、結果的にトリハロメタンの生成も増加の一途を辿っており、これは非常に懸念されるべき問題です。
水の汚染の指標BOD
水の汚染を調べる「ものさし」となる指標の1つに「BOD」(生物化学的塩素要求量)があります。
BODとはその有機物質が微生物の働きで分解される際に消費される酸素量のことで、その数値が大きいほど、水の汚れがひどいといえます。
一般的に生活排水のBODは約200mg/ℓですが、汚染の少ない山間部の清流などでは0.5mg/ℓ、河川で魚が快適に生息できる水質は5mg/ℓ以下といわれています。
生活排水から出るBODの量
参考に、私たちが日頃使っている台所から出る排水のBODの例として、味噌汁200ccに対して35,000mg/ℓと途方もない数値が並びます。
品目とその廃棄量 | およそのBOD(mg/L) | 魚が生息できるように なる為に必要な水の量 |
---|---|---|
醤油 10cc | 100,000 | 300L |
味噌汁 200cc | 35,000 | 1,500L |
米のとぎ汁 2,000cc | 3,000 | 1,200L |
日本酒 100cc | 200,000 | 4,000L |
牛乳 200cc | 80,000 | 3,000L |
汚染防止は私たちの身の回りから
それでは、水質汚染を食い止めるためには、どのような対策が必要なのでしょうか。
生活排水による汚染は私たちの普段の生活でのちょっとした心掛けから防ぐことができます。
洗濯
まずは「洗濯」
私たちが普段から使っている有機リン系や窒素を含む合成洗剤を、化学添加料や香料、色素などを一切使用しない「純石鹸」に切り替えましょう。
純石鹸は環境にもやさしく、合成繊維からウールまで何でも洗濯できるほか、手洗いや入浴用にも使うことができる大変便利なものです。
台所まわり
また、「台所まわり」にも配慮が必要です。
例えば、料理に使った油は流さず、別途処理するなどの対応だけでも、排水の量はずいぶん違ってくるはずです。
水は私たちの暮らしにとって必要不可欠な物です。この様な危機に直面している限り、今後の水環境の問題は非常に懸念されます。
しかし、私たち一人一人のちょっとした心掛けが、十人、千人、万人と気持ちを同じくする人たちを増やしていくきっかけに繋がることは想像に難くないことです。
私たちの暮らしを支える大切な「水」を、いつまでも私たちの手で守っていきたいものですね。
参考「トコトンやさしい水の本」 谷腰欣司 著(日刊工業新聞社)